台本の中で場所や時間の設定をする柱書き
台本の柱書きは場面や時間の設定を書く部分です。書き方は「〇アパート、太郎の部屋、リビング(早朝)」など、先頭に「〇」をつけて書き始めます。撮影シーンのナンバーがつけられる箇所で、ナンバーを省略するために「〇」を使っています。柱書きはシーンを撮影する場所を記し、制作スタッフに対する指示になり、時間の指定も書いておきます。ただし、その通りに作品で演じるかは監督が自由に判断することです。早朝、朝、夕、夜、深夜などと記し、昼は書かないことが多いです。
柱書きは多すぎても少なすぎても、話のテンポが落ちるとされています。1時間ドラマだと50前後を目安にするといいでしょう。他に同じ場所のシーンが続く場合は、「〇同、寝室」と太郎の部屋を省略することができます。また、回想シーンが入るときは「〇(回想)、同寝室」と書きます。回想が終わるときには最後に「(回想終わり)」と記すか、次のシーンの始まりで「〇(戻って)同、寝室」と記してもいいです。シーンが変わるごとに1行空けましょう。
台本の柱書きについては書き方の基本はありますが、作者それぞれで細かい部分が違うところはあります。柱書きの設定は作品を制作する予算に関わってきます。そういう予算面も考えると、柱書きの設定のセンスも問われます。海外や旅先などあちこち指定すると、予算がオーバーしますし、夜のシーンが多いと撮影するのに時間がかかったりするので、設定はよく考える必要があります。ただ、制作スタッフに気を遣ってシーンを少なくすると作品の質に関わります。大事なのは表現が正確に伝わるように、正しい書き方を守って台本を書くことです。
人物の動作や状況を記す台本のト書き
台本のト書きは人物の動きや状況を書く部分です。書き方は「〇アパート、太郎の部屋、寝室(早朝)」「太郎、スマホのアラームで目が覚める。」「太郎『もう少し寝よう』と、また布団に潜り込む。」のように書きます。監督やプロデューサーによって、ト書き部分は現場に任せてほしいという場合と、きちんと心情が分かるト書きを書いてほしいという場合があります。書き方の基本的なルールは上から3字下げて書くことで、人物の動きや状況を表します。
基本的には過去形は使用せず、現在形で書きます。過去形で書くと、作者の意図を聞かれることになるので、特になければ現在形で揃えます。また、「太郎がスマホのアラームで目が覚める。」ではなく、「太郎、スマホのアラームで目が覚める。」と書き、「が」をつけません。その方がテンポやリズムが出やすいので、「が」を書く癖がある方は一度取ってしまうと、テンポがよくなるかもしれません。また、人物名を最後に記すときは、「ふぅ、と息を吐く太郎。」のような書き方をします。作者は自分のイメージに合った映像を思い浮かべていますが、監督やプロデューサーの捉え方はさまざまなので、でき上がった作品が必ずしも作者のイメージ通りになるとは限りません。
他には初登場の人物は姓名の後に年齢を記します。「木村次郎(20)、玄関のチャイムを鳴らす。」と書き、以降は「次郎」または「木村」で構いません。女性や子どもの登場人物は、名前で記すのが書き方の統一ルールです。映像作品でテロップを出す場合は、「T『それから三年後』」、イメージや短い回想シーンは「(フラッシュ)幼い頃、母親に手を引かれて歩く。」などと書きます。
登場人物がしゃべる台本のセリフ
台本のセリフは最初に登場人物名を書き、誰のセリフなのか分かるようにして、セリフはカギカッコ内に書きます。セリフが複数行にまたがる場合、2行目からは1字下げるのが書き方のルールです。また、三点リーダーや傍線が必要なときは、「…」「―」を2マス分使用します。セリフを言うときの感情や動きを加えてセリフを表現するときは、「太郎(あきれ顔で)どうしても東京大学に行きたいの?やめた方がいいんじゃない?」「次郎(毅然とした様子で)男が一度決めたことはやらなきゃ!」とし、丸括弧でセリフ内のト書きとして書きます。
「?」「!」「!?」は1マス分使用し、文章が続くときは1マス空けます。セリフの最後はカギ括弧で終えるようにし、句点「。」は使用しません。他にナレーションは「人物名N」と書き、場面や状況の説明をするときなどに使用します。「人物名M」はモノローグの部分で、登場人物の心情を語らせるときなどに使用します。電話で話すなど、姿は見えないけれども声だけはするときは「人物名 声」と書きます。
実際の人間の話し方はさまざまなので、登場人物の数だけセリフは書き分けたがいいですが、作者1人ではとても難しいです。その場合は1人ずつセリフを追うようにして書くと、人物の人柄に一貫性が生まれます。主人公なら、主人公のセリフのみを追うようにすると、他の登場人物も書き分けられるようになります。これは台本のセリフを手直しする際に役立つ書き方です。