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台本の読み合わせはなぜ行うのか

2019/03/08

 台本の読み合わせはなぜ行うのか

台本の読み合わせは稽古の初期段階で行うもの

演劇などの芝居では、本番を迎えるまでに何度も稽古を繰り返し行います。その最初のステップとしてしばしば用いられるのが読み合わせと呼ばれる作業です。実際に出演する役者が台本に書かれているセリフを声に出して読む稽古のことです。本読みと呼ばれることもあります。この読み合わせをするのにはいくつか目的があります。 まずは台本に書かれているセリフの練習のためです。人によって声の大きさや滑舌などは異なり、自分ではきちんと言葉を発しているつもりでも、他の人が聞いてみるとちょっと聞き取りにくいということもあります。このようなことを読み合わせを通じて指摘しあうことが可能です。またイントネーションが人によって異なる場合もあります。自分は別におかしくないと思っていても、他の人が聞くと自分とは異なるので変であると思うことも多々起こります。このようにして、自分が知らず知らずのうちに間違えている読み方、発声の仕方などを見直す意味でも必要です。 台本の中にはセリフの他にもト書きと呼ばれるその時の出演者の感情などが書かれています。ト書きは表情や言い方の中に込めることで表現していきます。このようなト書きを正確に反映できているかも、読み合わせの過程の中で確認します。例えば悲しそうに言うように書かれていて、そのセリフをしゃべってみたところ演出家などから悲しそうな感じがあまり伝わらない、もしくは悲しそうではなく悔しそうであるなどの指摘を受けることもあるでしょう。このようなト書きの表現の仕方の修正を行っていくためにも必要な作業と言えます。

演者同士の意思疎通のために

ト書きが書かれていれば、演技も大まかなプランも立てやすくなります。しかし台本の中で何から何までト書きが書かれているわけではありません。何も書かれていない場合、キャラクターがその時どう思っているのか、何を考えているのかを想像したうえでセリフを言う必要があります。もしかするとその解釈が役者によって若干異なっていたり、演出家の意図を理解していなかったりするケースも出てきます。このような意思の食い違いを調整する意味でも読み合わせをする必要があります。 読み合わせはそれぞれ演者が意見を言い合ってその中でみんなが納得できる回答を出すこともあれば、演出家が指示を出してそれに役者が従うスタイルなどいろいろです。どちらにしても作品に対するスタッフの考え方や価値観を共有させる作業として重要なものです。役者の中には台本を読み込んで自分の演技プランを固めてくる、予習をしっかり行うという人が多くいます。この予習の出し合いをして、検討を加えるステップと考えれば分かりやすくなるでしょう。 台本の中に悔しそうにという言葉があったとします。しかし悔しそうにという感情にも個人差があり、人によって受け取り方は異なります。そこで出演者の間で意見を出し合ってより良い芝居にするためにも読み合わせの作業は重宝します。このようにスタッフや演者の間でいろいろと意見を出し合うことで、正しい演技を体に覚えさせる工程が読み合わせです。またこの読み合わせの中で意見を出し合って、方向性が決まった場合、そのことを忘れないように本に書き込む役者も多いです。こうして、舞台のイメージを具体的に固めていきます。

立ち稽古のシミュレーションをするために

台本の読み合わせが進むと、立ち稽古と言って実際に動きをつけるプロセスに移ります。読み合わせには、この立ち稽古のシミュレーションをするという意味合いもあります。セリフだけを読んでいるだけと言っても、この時どのタイミングで言えばいいのか、言い方は何が正しいのかといったことを考えて参加をする人がほとんどです。そうなってくると、自分の立ち位置や動きなども同時にイメージするのが一般的です。例えば他の誰かに話しかける際に、その人が近くにいれば音量を抑え、遠くにいる人を呼び止める場合には、相手に聞こえるように大声を出す可能性が高くなります。このようにセリフの言い方によって、ある程度動き方も固まってきます。このようなシミュレーションを頭の中で行っておくと、いざ立ち稽古が始まった時でもスムーズに正しく体を動かせるようになります。 演出家もこの段階になるとさまざまな注文をつけてくることも考えられます。中には言い方だけでなく、動きに関する注意点も含まれてきます。セリフの言い方を見ることで、自分のイメージ通りの動きをしてくれそうかどうかを判断できるからです。言い方が考えていたものと違う場合には動きのイメージにもずれが生じる恐れがあるので、早い段階で注意できるのが読み合わせのメリットです。 読み合わせがきちんと行われれば、立ち稽古に移った時にセリフや動きなども頭に入りやすくなります。スタッフもどのような演出をすればいいのか、照明の当て方はどうするかといったことが明確になり、スムーズに進行することができます。

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