台本に使われる業界用語のメリットについて
映画やアニメ、舞台の世界では業界用語が多く飛び交っていますが、知らないと何を意味しているかわかりません。今から台本づくりをする人や読む人は、業界用語を知る必要があります。業界用語は芸能やエンターテイメントなどのくくりは同じであっても、各業界によって同じ言葉で表現方法が異なる場合や時代の流れで変わることもあります。
業界用語を使用するメリットは、作品の制作者に台本の内容を説明しやすく、説明文より短い言葉で表現できることで、一目でどんな指示が書かれているかわかります。また業界用語を知っていると、専門業種の人たちとスムーズにコミュニケーションがとれます。わからない言葉があると、毎回その言葉の意味を聞かなくてはいけません。そのため、携わる人は台本に書かれている業界用語は勉強しておくと便利です。
ただし台本づくりの際は、読み手に合わせた言葉選びも重要です。業界用語を使用するのは便利ですが、わかりづらい内容で誤解が生じるとデメリットになるので、読み手に伝えられる内容を心がけることも大切です。
より良い作品制作のためにわからない言葉は、調べるか知っている人に聞くようにしましょう。今はインターネット検索をすれば、容易に意味を調べることができます。各業界の専門サイトには用語辞典が設置されているので、地道に調べましょう。言葉の意味がわかると脚本家の意図を把握でき、製作者が同じ目的と方向で作品を作りやすくなります。
声優が使用するアフレコ台本の業界用語
声優やアニメの世界でも業界用語が使用されています。よく耳にするアフレコという言葉は、アフターレコーディングの略称の和製英語で、先にできた映像に合わせ声やサウンドをのせる作業を意味します。週ごとに放送されるアニメ制作などは映像が間に合わないことが多く、タイムコードに沿って声のみ先録りする場合もあります。先録りした声に映像を加えることをプレスコアリング、通称プレスコと言います。タイムコードとはアニメ映像の経過時間です。
ONとOFFのワードは声優の台本でよく目にしますが、ONとはアニメのキャラクターが映像に映し出されている状態をさし、OFFはキャラクターが画面上に映っていない状態をさします。ONの時はキャラクターが映像上に映っているので、キャラクターの口にあわせてセリフを言う必要があります。
アニメ業界においてOFFは表現するものが多く、マイクから離れている時やスイッチが切れている時、仕事が休みの日をさすこともあります。ちなみに、マイクから少し離れた状態はちょいオフというワードを使用します。オフゼリフとは映像に映っていないキャラクターが何かセリフを話すことを言います。オフゼリフにはOFFと書かれているため、ONの時のセリフと区別しやすいです。
その他アニメに携わる声優の台本にはM、N、SEの英語表記が多く、Mはモノローグの略で心のつぶやきのセリフです。Nはナレーションの略、SEは効果音であるサウンドエフェクトを意味します。アニメ制作者や声優が使用する台本には、多くの業界用語が使用されているので、脚本家や声優は事前に覚えて現場入りすることが多いです。
舞台や映画の台本で知っておきたい業界用語
脚本家は演劇の世界ならではの言葉を使用し、映画やドラマ、ミュージカルの台本を作成します。台本に書かれている業界用語は、位置、機材、演出に関する言葉が書かれています。舞台や映画では上手や下手で位置を表します。上手は観客から見て右、下手は左をさし舞台や撮影現場で使用されます。
上手や下手を使う理由は、監督とカメラマンと俳優が同じ方向を認識するためです。右や左と表現すると、監督、カメラマン、俳優がそれぞれ逆方向に捉える可能性があり混乱を招きます。舞台や映画では上手や下手と表現し、俳優や製作スタッフ全員を同じ方向へと指示するのです。
舞台では照明を灯体と呼び、照明器具は略称で呼ばれています。照明道具のピンスポットライトはピンスポと略します。ピンスポは鋭い光をあてられる照明器具で、ステージや撮影場所に向かい高い所から手動で光をあてるのが特徴です。サスペンションライトはサスと略されます。サスは俳優の真上から照明をあて、立体的な空間演出効果が望める機材です。
台本での演出表現では暗転と明転は覚えておきたい言葉です。暗転は舞台の照明を落とし俳優やセットを変えるタイミングとなります。明転は明るい状態で次のシーンへ移ることを意味しますが、暗転から明るくなる時に明転と表現している場合もあります。映像や舞台を作る人たちが円滑にコミュニケーションできるよう、業界用語が使用されています。
台本にはさまざまな業界用語があり覚えるのは大変ですが、知れば知るほど台本が読みやすくなるので、アニメ、映画、ミュージカルの世界に興味のある人は覚えるメリットがあるでしょう。